事業展開の生むパイプライン構築の多様性に関して
On the diversity of pipeline construction resulting from business development
(株式会社ポリゴン・ピクチュアズ / スタジオフォンズ)
(Polygon Pictures Inc. / Studio Phones)
本資料は会合後にディスカッションされた内容をふまえ、課題を整理し会合を振り返るかたちで記載しています。
本資料は別会合での記録となります。今回の「クラフツマンシップとアーティストのテクニック20190202」に役立てる意味で、会合後にディスカッションされた内容をふまえ、課題を整理し会合を振り返るかたちで記載しています。
■概要
■Overview
今回の会合では、各社が主に扱う制作案件の違いや事業展開上の方向性を反映し、それらを支えるパイプラインの方向性の違いが顕著に現れる会合となりました。各社、社内スタッフでのパイプライン構築とインフラ面でのメンテナンスを行う点は比較的共通でしたが、案件の受託上生じる自然な発展上の違いが各社の文化の多様性を育んでいたように思います。
この資料では、今回の会合で見られたそれらの方向性の違いとパイプライン構築上の方向性に関してまとめていきたいと思います。
under construction...
■雑多な案件かつ短納期で大量のプロジェクトを扱う場合
■When handling a large number of projects in miscellaneous cases and short delivery time
短納期であるという制約上、開発をしていては間に合わないが、雑多な案件を扱う上での発展性を遂げたスタジオの発表もありました。既成品の動向を深く把握し、それらの性質を深く掴み、その上で自社に今来た案件に対応出来るよう柔軟性を高めていく、または、急に始まる多様な案件へ対応出来るよう、日常的に雑多な案件に対応していくための基礎力を養い、汎用性の高いソフトウェアの習熟度を上げ制作に対応していく、そのような側面での 工夫が随所に見られたように思われます。
そこで必要な開発に関しても、雑多な案件を支えらえる意味での発展性を遂げて進展しており、遠隔地間でのアセット共有や、社内スタジオ以外のパートナー対応への迅速かつローコストな対応力を進化させた結果、他のスタジオより機動性を高め、スタジオとしての柔軟性を高めている印象が強く残る講演でもありました。
既成品を用いることのメリットは大量調達上のメリットとして、コスト面及びメンテナンスの堅牢性と部品調達性能を向上させていくでしょうし、比較的コスト算出も迅速かつ透明性が高いものとも言えるため、他社やクライアントから見ても透明性高いコスト算出性を高めているようにも思われました。これらは、多くのスタジオにとっては、迅速なパイプライン改変や構築と、それに伴う透明性高いコスト算出性を達成する意味での模範的形態とも言え、機材レンタル機能を自社内で構築し、パートナー各社を支えて行く意味でも、アウトソース先とのより良い関係性の模索の意味でも模範的なスタジオ形態とパイプラインデザインではなかったのではないだろうかと、モデレーター達は考えています。
under construction...
■長編シリーズ化を支える制作と、手作業でのバランスを扱うプロジェクトへの工夫など
■Production that supports long series serialization, ingenuity to project to handle manual balance
手作業の度合いが高くなっていくアニメ制作のスタジオであるほど、長期シリーズでも一貫したルックと完成度の高さを達成していく上で、様々な工夫を各社が発表しておりました。アクションシーンが多く手作業の入る余地の多い長編アニメなどを支える幾つかの工夫は、プリプロ工程と制作工程でのバランスを突き詰めた結果、融合が進んでいるとも言え、旧来の発想であればプリプロ工程で行っていた作業を、実質的にレイアウト工程や制作工程へと移行したかたちで導入していく工夫も紹介されていました。
その意味で今後の会合では、プリプロ工程か制作工程かなどといった区分に分けた特集をしていくことよりも、実質的にそれらはどのような意図で組み込まれて行われているのか、実質的に同じ作業を別形態で行えるならかたちを変えて導入していけるなどといった可能性を意識しつつ、より柔軟な発想でパイプライン構築でのディスカッションの機会を模索していくべきと思われました。つまり、プリプロ工程、制作工程など、フローの流れで区分されたディスカッションより、本質的な作業上の概念に着目し、ディスカッションを行っていくことが重要であると考えられると思います。
これらは量産性や効率化を考えていくスタジオにとっては模範的に参照して行きたい工夫とも言え、今回の会合でこれらの視点の新鮮さは参加各社に活気を与えてくださったように思っています。
under construction...
■長期制作を経て貯蓄したアセット運用とその工夫など
■Asset management saved through long-term production and its contrivance
長い歴史を持つ規模の大きいスタジオほど、過去資産の継承や運用面での発展性など、長期保管前提へのアセット管理に関して、大きなヒントとなる工夫を紹介して頂けたように思われました。
実際、様々な外部のパートナー各社との連携や、自社スタッフの入れ替わりでも支障の無いアセット継承上の工夫などの側面は、まさに生き字引的に経験として工夫を貯蓄して来た規模のスタジオならではのアプローチとして参加者が驚かれていたように思われました。
シェーダーやテクスチャーなど、制作時期を離れても継承しつつアイデアを盛り込んでいく、アセット運用とはまさにそのような長期保管でこそアーティストの工夫を支えていけるとして、模範的な事例としてアセット運用と社内アーティストの工夫の保管に関して参加者の多くが刺激を受けていたように思われました。
under construction...
■単一作品の制作に特化している場合や、作家性の高い制作を扱うスタジオの場合の工夫など
■When specializing in the production of a single work or devising in the case of a studio that deals with high artistic production
ラウンドテーブルでの各社の工夫などの紹介も活発に行われていた会合となりましたが、ラウンドテーブルでのパネリストの発表は、通常の講演となんら遜色無い刺激ある工夫の紹介も多く、講演と同等に各社の意見交換が育まれる展開となりました。
そこでは、作家性の高い制作を小規模制作体制で充実を図っていく数社のスタジオの工夫が話されており、実際、自社に合ったソフトウェアを使い込んでいく、他社には使い易いかは気にせず使い込んでいく、パイプラインはそれを支えるために独自の発展を遂げ、そのスタジオの作家性や独自性といった側面での発展性を支えていく、そのような紹介が多かったように思います。
また、単一作品に特化しているスタジオの場合は、自社に必要な表現手法の開発や、自社にフィットしたパイプライン構築のための基礎技術の推進を社内で強く進めており、結果的に、他社の発展に依存しない傾向で技術開発を進め、アルゴリズム面での多様化を推進していく傾向にあったように思います。
つまり、作家性の高い制作を扱うスタジオや、そのひとつの形態として単一作品や独自性ある個性を推進するスタジオならではの研究開発体制や技術導入へのアプローチなどが各社にとっての模範と言えるひとつの方向性を強く押し出しており、絵を描きたい、このような映像を生み出したい、など、素朴な制作スタジオの願いを達成していく上でのある種のクラフツマンシップがスタジオとしての発表内容から強く感じ取れたように思われました。
under construction...
■海外大型案件へ最適な形態を模索した上でのプロジェクト推進上の工夫など
■Such as project promotion on the ingenuity of on which to seek the best form to large-scale overseas projects
随時、迅速にクライアントの確認やディレクション上の確認を行わなければならない、迅速な制作コストの再計算を行うことを必要とする、はたまた同時に、そのスタジオでの個性と言える制作上の表現技術を開拓していく、そういった意味での工夫こそ、海外大型案件での映像制作を進めていくうえでの大きな動向と言えるのではないのかと思われました。
これらは単に絵作りを行うだけでなく、スタジオとしての文化を育んでいく意味でも重要なアプローチとも言え、量産性と独自性の融合を意識した制作体制と開発体制のあり方として、各社の模範として、意味を大きく持ち得る発表をなさっていたように思われました。
また、こういった規模の制作を行えるスタジオ特有の話題として、これらの業界をリードしていく立場に自然とおかれていく側面があり、それらを受け止めつつも社内の文化を育てていく意味でのパイプライン構築やインフラの高度化を推進していくなど、業界を理度する立場ゆえの苦労も見受けられました。
しかしながら、自社の文化を育てつつその文化を社外や一般に広めていくことで自社の得意とするマーケットを開拓していけるという側面もあり、この規模のスタジオならではの事業展開の為せるパイプラインの形態ではないかと、参加した各社が思われていたように考えています。
under construction...
■ゲーム開発目線での映像制作パイプラインへの目線から
■When handling a large number of projects in miscellaneous cases and short delivery time
今回もゲーム関係からの参加も多く、映像制作スタジオ、特にアニメ方面のスタジオ向けの共有ストレージの基礎的講演など、お互いの分野を育てていく意味での講演もあったように思われました。
研究開発に慣れた方による機械学習に関する画像生成面でのデモなども含め、自社事例紹介ではない講演として、他業界の推進に対して講演を進めていくなど、映像とゲームの双方の参加者の意識の高さも感じられる展開となりました。
これら会合シリーズを展開していくにつれ、業界間での垣根を意識しない講演が力強く育まれて来たと思われますし、今回の会合では、今後の会合企画への変革としてのポイント、つまり、映像やゲーム、各種工程、といった区分を意識しない展開の模索など、映像とゲーム領域の新たな展開と言えそうな流れが強く出て来たように思われました。
under construction...
■まとめ
■Conclusion
各社が異なる事業展開のもと、パイプラインの脱標準化を進めていく。画一化した映像制作パイプラインではなく、各社が各社の文化の多様性を育んでいく。その意味で、どの事業形態でも各スタジオのパイプラインは独自の発展を遂げていることが再確認出来、また同時に、各社間で課題の共有などに関しても話し合っていくことへの強い提案など、各社が一定の情報共有をもって、個別に独自性を追求していく上での、良い流れを感じられた会合となったようにモデレーター達は考えております。
under construction...