映像制作サイドから見たリアルタイム処理とゲームエンジン
Realtime processing and game engine seen from the film production side
(株式会社ポリゴン・ピクチュアズ / スタジオフォンズ)
(Polygon Pictures Inc. / Studio Phones)
本資料は「クラフツマンシップとアーティストのテクニック20190202」での事後資料となります。モデレーターである2社がサーバーサイドでの開発主体へ移行していることから、モデレーター2社のサーバーサイドから見た感想中心の資料となっておりますので、どうかご留意頂きお読み頂けたらと思います。
■概要
■Overview
UnrealEngineなどの普及で、非常に膨大な資料や事例が一般にウェブ上で入手出来るようになりかなりの年月が経過していると思います。ソースコードをアクセス性高く配布している幾つかのゲームエンジンにより、様々なユースケースが一般に紹介されて来ており、リアルタイム処理の各種テクニックも学べることも重要ながらも、それ以上に、映像制作として見てそれらのエコシステムは学ぶ事が多いように思われたことから今回の会合の企画を進めました。
この資料では、映像制作サイドから見たこれらのエコシステムやリアルタイム処理の素晴らしさを中心に、会合でのディスカッション内容を踏まえて、会合の様子をまとめて行きたいと思います。
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■会合の様子から
■From the state of the meeting
基本的に事前資料で掲載した資料の内容を、参加者間で理解を育むようにディスカッションしていくかたちで進みました。そこで幾つか顕著に出た話題として、スタッフのキャリアパスとモチベーション維持の視点での、各スタジオでのエコシステムの話題が多く出ていました。あるスタジオの発表では、近年のモダンなIT技術に着いていく意味でも社内での各種変革を進めているという発表があり、エンジニアとしてのスキルアップやモチベーション維持の視点もスタジオとしては重要ではないか、そのような意見も出ていました。
特に近年、SoC、FPGAなどを扱う領域での大手企業中心での開発に関するニュースが増えており、スケールの違うこれらの開発にどのように立ち向かっていくべきか、それらの分野のエンジニアにも関心を持って頂けるようなスタジオの体制作りや取り組みはどのようなものなのか、など、参加したスタジオの現在の葛藤が色濃く出ていく会合となりました。
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■オープンに進むこととそのエコシステム
Forward to open and its ecosystem
ゲーム用途に開発されたゲームエンジンの幾つかは、本来の用途であるゲーム以外にその利用範囲を広めていることは周知の事実で、建築のプレゼン用途から体感性を意識したVR、映像制作での利用から、様々にその利用範囲を広めていることと思います。加えて、特定の企業でのみ用いられているソフトウェアやゲームエンジンとは異なり、多目的に利用範囲を展開していくことにより様々な可能性が発掘されて来ている現状もあり、多くのIT分野のエンジニアも親しみつつ利用範囲を拡大していくそれらの傾向には、エンジニア育成や技術改革の側面でのエコシステムとしての機能が存在するのではないかとモデレーター達は考えておりました。
そのため会合では、「エコシステムとしての映像制作/ゲーム開発インフラ」「ゲーム開発や建築分野のBIMに関するセミナーの報告」としてラウンドテーブルの時間を設定し、どのような在り方を今後模索すべきか、様々な意見を交わすことが出来ました。そこでは、各業界でのITの進展による様々な技術に常に触れていく環境作り、社内システムレベルで変革を続けていくことによるスタッフのモチベーション維持やスキルアップ面での重要性など、集団制作ゆえ考えていくべき事柄を各スタジオで閉じない視点でディスカッションしていけたように思われました。
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■映像制作から見たリアルタイム処理
■Realtime processing from film production
インタラクティブに動作することが求められる各種機能を、映像制作インフラの内部では徐々に抱えてきて自然と増えて来ている現状にありますが、60fpsなど画面のリフレッシュレートを意識して技術を進展させて来たゲーム業界の大変さを、今回の会合では改めて確認することとなりました。しかし一方、GPUの消費電力の高さなどの観点から、今後の映像系の高負荷計算ではもっとFPGAを意識すべきではないか、開発コストが高くても、やはり移行を考えていくべきではないか、など、様々な意見が出ておりました。
また今回は、映像分野とゲーム分野でのリアルタイム処理への感覚の違いも顕著になりつつあった会合でもありました。映像制作でのリアルタイム処理への関心の多くは、描画性能面での関心はもとより、制作環境でのリアルタイム処理の組み込みをサーバーサイドでどのように今後進めていくかということに集中しており、計算クラスター主体でのバッチ処理をそこにどのように組み合わせていくか、など、バッチ処理とリアルタイム処理の組み合わせについての関心が大半を占めていました。
このことにより、分野間での関心の違いが大きく現れて来た会合となった印象で、非常に有意義な時間を過ごせたように思いました。
バッチ処理とリアルタイム処理の組み合わせについて
https://a-film-production-technique-seminar.com/crafts/materials/ppi_phones_batch_and_realtime_process/index.html
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■ゲーム業界での開発に触れて
■Touch the development in the game industry
一般的に、国内の映像系スタジオの開発人員に比べてゲーム会社の開発人員はかなり多い状況にあると言われております。内製ゲームエンジンを保有しているゲーム会社の方々の講演では、豊かな開発力と経験を積んだことによる成熟度を参加した映像系各社は感じていらしていたようにも思います。ゲーム会社の開発人員の裾野の広さは、開発上の隅々まで目の行き届いた開発体制を構築していらしている印象で、参加した映像系各社は、見習わねければいけないと、会合の後にも話題にしておりました。
そこにはひとつの成熟したエコシステムの存在があるようにも思われ、リアルタイム処理での技術上の工夫を学ぶこと以上にそこに挑み開発計画を立てようとするなかで、スタジオとしてのエコシステムやバランスの良い開発チーム編成の重要性を考える機会に恵まれたように思います。
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■まとめ
■Summary
技術情報の公開に関する重要性とエコシステムの関係が非常に強く感じられた会合となりましたが、そのことで達成することが技術の変革を促進していくことそのもの以上に、各スタジオでの開発スタッフのモチベーション獲得やスキルアップの機会促進などの様々な意味を持っていることに気づかされた会合となりました。
スタッフの様々なトライアルを支えていく意味でのリアルタイム処理の活用は、映像制作でのプリプロ工程での試行錯誤の回数増加のための取り組みとしても重要であり、同時にそれらは、スタッフのトライアルの範囲を広げていく意味でも、各スタジオの個性を育むかたちで重要になって来ているように思われました。
しかし一方、サーバーサイド主体での開発に移行しているモデレーターの二社の知識では実機ベースの開発が主体のゲーム分野の様々な技術を会合で扱っていくにはかなり無理が来ており、今後は映像制作面での会合企画中心に進めていくべきではないか、情報公開を進めつつ、時折分野間での交流企画を進めていく形態にシフトしていくべきではないか、そのように思われた会合ともなりました。
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