ワークプレイスの多様化に関する課題
Issues related to workplace diversification
(株式会社ポリゴン・ピクチュアズ / スタジオフォンズ)
(Polygon Pictures Inc. / Studio Phones)
■背景
■Background
映像制作などのような、大人数で大規模な制作を扱うスタジオの場合、制作で用いる必要電力量の削減(省エネ)や、アセットの再利用性含むストレージ全体のダウンサイジング、スタジオで排出するゴミなどの削減(ゼロウェイストなど)が課題となって来ていると思われますが、そこに加えて、単純な在宅勤務推進だけでなく、多様なワークプレイスについて考えていくことが重要と思われます。そこで2020年8月の段階では、「リモートワーク推進と、オフィススペースの機能性」の初版の公開を終えた段階の中、多様性あるワークプレイスの確保の意味で、少し実地検証的なテスト環境を現在設営し、テストを開始しております。この資料では、随時、その状況などをご報告していければと考えております。
FPTSの過去会合の参加者の皆様には、多少でも、過去会合を踏まえての取り組みの一端として、参考にして頂けたらと思います。
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■実地検証用の環境
■Environment for field verification
現在は、メインの映像制作パイプラインから外した形で実地検証を始めております。具体的には、下記となります。
電気自動車を充電ステーションで充電する感覚で、自宅(一つの拠点)で充電済みの端末を、サテライトスタジオ(制作に関する一つの拠点)、喫茶店、庭、公園などの様々な拠点で充電しつつ、円滑な制作を進めていけるかの実地検証の目的で進めております。
使用機材
MacBook Air 2009
MacBook Air 2019
iPadPro 11 2020
Chromebook tablet (ASUS CT100)
ChromeOS-PC 廃棄前のi7系PCにcloud readyをインストールし再利用
Ubuntu 18.04 LTS, CentOS 7,8系のPC 廃棄前のi7系PCを再利用
オンラインストレージ
pCloud 端末内ストレージを消費しないオンラインストレージとして今回採用
(今後、GCP, AWSなどを用いる際は、gcsfuse, s3fs-fuse, goofysも検討中)
通信
WiFi(通常のポータブルWiFi程度)
テストに用いるソフトウェアなど
Blender, Maya, Kritaなどの商用DCCやOSS-DCC
iOS用に、Procreate, AFFINITY Designer,
FPTS-kitchen(現在開発アルファ段階で未公開だが、オープンソースによる公開を念頭に開発中)
電力
携帯型太陽光パネル付き蓄電池(キャンプなどに用いる数千円で調達可能なもの)
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■選定上の意図や設定、テスト上の問題意識
■Intention and setting for selection, awareness of test problems
選定上の意図
各端末からVPNなどでスタジオ内サーバー内コンテナに接続してのリモートワークなどは、比較的普及しており、多様化していくワークプレイスを検証する意味では、適していないように思いました。そこで、各端末内で稼働するソフトウェアでオンラインストレージをマウントして制作していく形態を採用し、古民家やマンション、屋外やキャンプ地や公園などでも稼働することを念頭に、携帯型太陽光パネル付き蓄電池を用いての電力供給での制作を試していくことにしました。
各端末の設定
ChromeOS上では、LinuxのLXDコンテナを活用しBlender及びFPTS-kitchen(go言語で書かれたサーバーサイドサービス環境を、今回はローカルにLXDコンテナ内で稼働)を稼働させました。chromebook
tablet上ではFPTS-kitchenを稼働させ、ペン入力にてドローイングなどのテストを行い、Google-Drive経由でpCloudに移動させるなどのテストも行いました。
各端末の性能差はどうしても出てしまいますが、FPTS-kitchenは非常に軽量に稼働する設計となっているため、
CPU: OP1 Hexa-core
メモリ: 4GB
eMMC: 32GB
Mali-T860MP4を採用しているCT-100でも、軽快に動作するのが特徴です。
選定上の背景
今回使用したChromebook
Tabletは、GIGAスクール構想やコロナ禍においての教育利用として、かなりの台数が小学校、中学校など教育機関での日常利用に導入された機種と考えられます。性能は落ちるが安価かつ堅牢なこの機種をテスト用途に用いたことで、アーティスト端末に用いられる機種の選定の幅をどこまでもたせられるか進めました。
この資料を記載した2020年夏の段階でも、Chromebook
Tablet内でのLXDコンテナ起動は非常にスムーズで、下記で詳しく説明していくように、タブレット特有の操作性の課題はあるものの、かなり実用感に足る、そのような印象を強く感じられました。
BlenderなどOSSでの映像制作環境が様々な年齢層で普及していく中で、どのような規模の制作でも一定数のスタッフが参加すれば生じる連携面での課題が映像制作パイプラインと考えられます。高校の部活で映像制作を行いたい、小学生同士で少し本格的な映像をCGで作りたい、など、保護者の方々や教員がサポートに入る必要は多少あれども、プロユースの環境が身近かになって来た現代ならではの発展が今後期待出来るのではないかとモデレーター達は考えております。
Blenderと映像制作パイプラインに気になる事柄
準備中
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■テストしてみての感触から(電力編)
■From the feel of trying the test (electricity)
今回初めて携帯型太陽光パネル付き蓄電池を扱ってみましたが、小型ながらも、一回の充電で各端末の充電も出来てしまうことに驚きました。今回は携帯型太陽光パネル付き蓄電池でのテストとなりましたが、適度な規模の蓄電池と太陽光パネルが摂津出来れば、電気が届いていない場所(部屋のベランダ、庭、山の中、海辺の砂浜)などでも、雨や日差しに注意すれば、結構ワークプレイスにはなるものだと感じました。
スタジオとして長期で利用するには、一時性の高い浜辺などでの作業は厳しいとは思いますが、大きなサーバーや計算クラスターが必要なイメージの強い映像制作分野でも、各アーティストの端末や研究開発用の端末の稼働は、この程度の電力確保でも結構出来るように思いました。ロケ地などでのCG制作を太陽光での電力確保で補うなど(他にもバックアップで電力は用意した方が、日照りが悪いと作業出来ない)、使い方の工夫が出来れば、緊急時やアウトドアでの制作環境確保も可能なようにも思われました。
実用的なユースケースとしては、古民家再利用型サテライトなどのスタジオ形態を模索する際、スタジオとしての必要電力確保や電力不足への補完策として、こういった太陽光パネル導入を考えたり、いわゆる太陽光発電と通常電力のハイブリッド環境を考えたりと、そういった使用は十分に視野に入るように思われました。
ただ、今回採用したキャンプ用小型太陽光パネルの性能なのか、電気確保が結構不安定になったこともあり、本格的な利用には、もう少し安定供給性の高い小型の太陽光パネルも必要に思われました。加えて、最近の小型デバイスやラップトップの内臓バッテリーは性能が高くなって来ているため、緊急時に充電する感じでの運用も多少視野に入って来たように思われました。
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■テストしてみての感触から(性能編)
■From the feel of trying the test (performance)
計算負荷の大きい計算はサーバー内で行う、各端末でもある程度の処理は行う、これらはいわゆるエッジコンピューティングとして近年増えている形態であると思われますが、これらのユースケースに対しての、実際の動作感触は十分に手応えがあるものでした。各ユーザーから計算指示を出して動作するいわゆるSaaSとしての利用に加え、サーバーサイドに自動化エンジンを設置し、各端末の利用状況やデータの書き込み、チームとしての進捗状態の認識に対し処理を自動的に行う各種サービスを設置し制作していくことにより、勤務時間帯などの多様化に対しての仕組み作りは重要になっていくものの、機器の性能としては、想定以上に性能要求が低いこともわかり、例えば古いアパートなどに住むアーティストへのサーバーサイドサービス供給なども、電力量補完に太陽光パネルと蓄電池を設置しての環境構築などの選択肢もあるとわかり、今後も掘り下げて考えて参りたいポイントになりました。
自動化エンジンの(自動化前提の)スケジューラー
準備中
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■PC環境の再利用(リユース)
■Reuse of PC environment (reuse)
フルCGでの大規模映像制作を扱うスタジオというと、今までのイメージでは、2PB程度のストレージや、性能の高いCPUでの大量の計算クラスターをスタジオに設置し、各アーティストの端末も、性能の高いCPUと大容量のメモリ、といった、そういった側面が多くの人の印象ではないかと思われます。また、実際に、2020年の段階でのポリゴン・ピクチュアズでは、そのような構成になっております。
しかし今回、新型コロナウイルス拡大懸念に伴うリモートワーク実施期間は、在宅で実際に扱う端末に大きな性能要求はなく、遠隔で操作する環境での大掛かりなテストが出来たように思いました。今回は、さほど性能が高いわけではないが柔軟なユースケースを可能とする端末を選択しテストしたわけですが、特には、ChromeOSなどの比較的性能が低いマシンでも軽快に動作するOSなどを古くなった機種にインストールし、そこで制作環境を構築し、廃棄前マシンの再利用可能な範囲を増やせたように思われました。
映像制作スタジオでの計算機器の多くは、今までは数年単位で廃棄しつつ性能の高いものに置き換えていく形態が大半となっていましたが、「できるだけ長く使う」ことを念頭に、用途を変えての再利用として、今回のテストは考えるべきことに多く気付けたように思われました。計算負荷の高い処理は一時的で、ほとんどの時間がアイドリング状態に近い状態となる傾向のあるアーティスト端末の場合、計算クラスター用途では逆に電力消費が増えがちになるものの、今回のようなケースでは、リユース面でのメリットの方が大きいような印象もありました。正確には、廃棄し消費電力の抑えられた設計の新型機器に切り替えるのがいいか、今回のようなリユースして活用するケースがいいかの判断は出来ないですが、今後は、検討時の選択肢として、リユースも検討すべきと思われました。
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■ワークプレイスの多様化に関して(2020年7-8月時点での感触として)
■Regarding workplace diversification (as of July-August 2020)
サーバーサイドサービスや自動化エンジンを組み合わせた映像制作が進んだ場合、エッジコンピューティングなどの進展としても、ワークプレイスの多様化に繋がっていくように思われました。映像制作のように人材流動性の高い業種の場合、スタッフの数の増減も激しく、急にワークプレイスの確保や削減などを行っていくなどの措置がどうしても日常的な課題となって来ている印象があります。柔軟にワークプレイスを確保したり撤去したりしていく上で、今回の2020年7-8月でのテストは、今後に関して考えていくにあたって有意義なテストとなったように思われました。
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■コンテナやVMの稼働感(2021年11月時点での感触として)
■Operation feeling of containers and VMs (as of November 2021)
Chromebook内でのLXDでの稼働テストを始め、OSX上でのmultipassを利用したクラウド利用感覚でのインスタンス稼働テスト、コンテナ内でWeb
Serviceを立ち上げ、同端末内のホスト側からそれを利用し、入出力のみネットワーク上の別のストレージやpCloudに行うなど、思い付く限り様々なセッティングで稼働テストを行いました。
感触的には、現代の技術の進展を感じるとともに、プロダクションでのフローに適した要素技術の見定めは重要にも感じられ、日常的に様々な環境での動作テストは重要ではないか、そのように思うこととなりました。
multipass
https://multipass.run
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■自主学習環境の構築のし易さ
■Building ease of self-directed learning environment
映像制作スタジオで働くスタッフと言えど、スタジオ内の各種マシンで勉強も勿論行えるながらも、自由度を生かした自己学習体制となると、個人で学習環境を構築したいと思うことも多々あるのが実情です。しかし一方、映像制作で用いるハードウェアやソフトウェアは高価になりがちで、Blenderなどの普及で環境に幅が出つつも、若干の限界がそこにはあるようにはモデレーター達は考えております。
今回の一連のテストでは、多少自己学習環境の構築のし易さを感じられる部分もあり、少なくとも、他分野で進んだ技術を体感しつつの簡易制作環境作りは、環境構築そのものが勉強になる、そのようにモデレーター達は感じ取れました。
今後もこの視点での可能性は、自己学習環境やトライアル環境の整備という側面で、考えて参りたいと思います。
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