映像制作パイプラインとアーティストのテクニック 2
Film Production Pipelines and Artist Techniques 2
ポリゴン・ピクチュアズでは、自社のみならず業界全体の技術力向上と活性化、グローバルな展開を行うプロダクションの増加など、業界全体の様々な技術的発展を意識して前回の会合(※1) を開催しました。
そこでは、各社が自社の特徴を引き出す上で、パイプラインのみならず、パイプラインを実現するためのシステムインフラの設計の時点で、個別の進展を行なっている状況を確認でき、多様な制作形態の進展は、産業そのものの活性化に繋がると感じることが出来ました。
映像制作のパイプラインでは、アウトプットである映像を効果的に制作するだけが目的で設計されていません。
特に、海外の規模の大きい案件に代表されるように、クライアント側へのレポートや、各種アセスメント、アウトソース先のマネジメントの明確化や、リスク等の事前説明や調整のための実施体制など、内部統制に関する様々な要件も満たした上でのパイプラインシステムとなっていることが、設計の段階から必要となります。
そこでは、わたしたちが制作する映像は、基本的にはプロダクトとしてリリースされる性質上、そのプロダクトのイメージに影響を及ぼす言動が行われていないかなど、インフラレベルでのチェック体制の整備など、IPの獲得、価値の最大化という面での重要なポイントを含め、考えていくことになります。
今後の展開次第では、必要に応じて研究開発費の取り扱いも会計基準の違いなども考慮して検討していく必要があり、それらは全て開発ディレクションを行っていくうえで考慮していくべき対象となります。
グローバルな展開を見据える場合、インフラへの要求事項もグローバル基準となり、そのため、参入障壁が高くなってしまうケースがあるのも現状だと思います。
わたしたちは、これら制約をクリアしていく中で、どのようにして自社の特徴を伸ばす制作体制を築けるのか、日々インフラの設計の見直しを進めています。
そこでは自社のアーティストの個性を伸ばし、そこで出たアイデアの管理運用の体制を安定させていく体制づくりにも考慮し、その成果を成果物となる映像へ適切に展開していくことがプロダクションとしての機能の大切な部分であると考えています。
これらは、請負型での制作であっても、自社企画での制作であっても、グローバルな展開を視野に入れていく場合は欠かせないファクターになると思います。
ネットワーク技術の普及により、プロダクションの規模に比例しないかたちで、グローバルな視点でのインフラの設計運用を行っていく難度が発生しているとも言えます。
今回のトピックスは、システム上の情報統制とアーティストの自由度の確保を、クライアントなど、案件オーナーへの迅速なレポート生成と、それに伴うシステムの改変速度に焦点を当てて行います。
ポリゴン・ピクチュアズでは、海外大型案件受託の経験により、これらシステムに日々改善を行ってきて来ていますが(※2) 、その改善の裏側では、アウトソース先のマネジメントやチェック体制、問題を未然に防ぐための対策、各種タスクの明確化と高度な制作管理体制など、他分野の人材との交流なしには成立しない現状を踏まえた、さらなる改善を検討しています。
海外案件では各種保険などの加入や、報告に必要なレポートなどリスクヘッジなども行いながら進めていくわけですが、そこへの対応にも欠かせないこれらのファクターは、インフラ設計時に厳格化して行くことで円滑に制作が進んでいくものと考えられます。
これらは、自社だけでなくアウトソース先の技術向上など、自社とのパートナーシップ強化のための取り組みとしても必要です。
今回は、デベロップメント、デプロイメントの双方のフェーズで、これらをシステムとして達成していく際の、中長期的課題に関してお話しします。
今回は前回に引き続きスタジオフォンズさんにもお話し頂きますが、Studio Phones homes(※3)のプロダクト・イノベーション・マネージャーから見た、現在の課題、中長期的課題を説明して頂こうと思います。特には、パテントチェックへの考え方や、各国の意匠権などへの考え方の違いで現在苦戦している課題、システムとしてのチェック体制の実現の困難さなど、デプロイメント後の運用時の近年の課題に関してお話し頂きます。
(※1)
前回の会合
http://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/fppat_20170325.html
(※2)
パイプライン3.0に関する最近の記事
https://cgworld.jp/interview/ppi-engineer-2010706.html
(※3)
Studio Phones homes
https://www.studiophoneshomes.com/
■開催要項
●開催日時 :
2017年10月03 (火) (ただし、希望者の状況を見て、若干調整の可能性があります)
15:00-18:00
※当日は19:00時から懇親会を予定しています。
是非、ご参加ください。
●会場及び詳細 :
会場は、弊社会議室
●参加費 :
無料
●対象者 :
アーティストの人数が一定規模(50名程度以上)を想定された自社向けのパイプラインの開発担当の方
●キーワード :
クラウドインフラ、タスク分散処理、アセット管理システム、進捗管理システム、コスト評価システム、レポート自動生成、パテントチェックシステム、有事におけるシステム復旧と再構築体制の明確化など
●担当者 :
山森 徹 (ポリゴン・ピクチュアズ 技術部門 執行役員)
その他、何かご質問、および参加に関してのお問い合わせは、contact@a-film-production-technique-seminar.com までお問い合わせください。
■当日の内容
今回は主に二社での講演でした。
ポリゴン・ピクチュアズからは過去の海外案件受託の経験を活かし、そこで求められた一般的なアセスメントなどの紹介、クライアント及び保険を考慮した、レポート自動生成体制の今後の改善などに関して紹介しました。
会合に参加した大手映像制作プロダクションのパイプライン担当の方にそれらの理解を深めて頂くなかで、各社共通の仕組みとして、内部統制に関する厳しさを増していく必要性を、映像制作分野へのITインフラ技術者人材の確保、育成の点などから議論しました。
一方スタジオフォンズからは、自社のパイプライン構築環境Derbiesのクラウドサービスへの拡張検討の際、パイプラインという枠にとらわれず、単純なセッティングのみで稼働するシステムインフラ構築に向かっているという紹介がありました。
会合参加者の意見を交え、Derbiesの構成変更案は軽量かつプロシージャルな開発側への様々な難度を要求する一方で、アーティスト側には非常に単純な操作環境を提示し、クラウドリソースとの相性の良さがあるとの意見が多くありました。
しかしながら、受託制作を目的としない制作体制としての仕組みは、既存の請け負い型スタジオに簡単に取り入れられるものではなく、お互いの違いを学びつつ紹介するのが最善という結論に至りました。
全体として、余裕あるディスカッションの時間を設けたおかげで、前述の状況を踏まえ、人材育成、業界外人材の流入加速に必要な展開など、会社間でも基準や足並みを揃えるべき点に関して議論できました。
CG制作インフラに関わる要素を、他分野の技術水準と照らし合わせるようなことも重要で、定期的に分野を問わない技術交流を行うことで、単に技術的な発展にとどまらず、働き方改革の一貫として、CG映像業界の方々や業界外の分野の方々にも、キャリアパスの選択肢を増やしていけるような発展を期待しています。
■当日の議論で得られた課題など
MPAAベストプラクティスを参考に、会社ごとにオンプレミス及びクラウドでの制作環境の運用体制を確立すべき。
そのことにより、海外展開を視野にした映像制作環境を構築出来ていくと思われる。
各社、自社開発として安定的にインフラを稼働していく傾向が強い。
アウトソース先がインフラ開発や運用に関わった場合、PPIの過去の経験から、結果的に負担が相当大きくなると考えられる。
各社、それぞれの制作体制、ビジネス展開に合ったインフラを今後発展すべきと考えられる。
採用技術や制作の生産性などを契約時に明記していく際、生産性のパラメータ化、社内での技術の説明責任者を設定などを行い、これら契約書に反映していくことで、透明性あるパートナーシップ確立を考えていくことが重要である。
At the last seminar, two domestic studios introduced their film production pipelines and supporting aspects(*1).
We saw how, by applying the current reality of the cel look, etc., which is unique to Japan, each studio is developing in a richly individual way.
On the domestic stage, Polygon Pictures was successfully taking on orders for projects from overseas at an early point in time.
However, the security, report generation systems internal to infrastructure, etc., which the company was actively pursuing as part of taking these orders were not being sufficiently explained for a domestic audience.
Picking up from the last seminar, the current event will feature a talk from both Polygon Pictures and Studio Phones.
This time the focus will be on introducing the infrastructure issues, various report systems for pipelines, and operational aspects that must be actively pursued within Japanese studios.
Polygon Pictures in its talk will primarily introduce the fundamental guidelines for the development work on what will become its next pipeline(*2).
Studio Phones will introduce a pipeline environment for a single work(*3)--something made possible through specializations for that a film work--and the mid-to-long term issues ahead of it.
(*1)
Previous seminar
http://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/fppat_20170325.html
(*2)
Recent article about Pipeline 3.0 of PPI (Japanese)
https://cgworld.jp/interview/ppi-engineer-2010706.html
(*3)
Studio Phones homes
https://www.studiophoneshomes.com/
■Event Information
● Date:
3 October, 2017 (Tue.)
*A socializing event is planned on the day.
You are warmly invited to participate.
● Venue details:
The venue is meeting room on the PPI office.
● Admission fee:
Free
● Intended audience:
Developers of in-house pipelines intended for a certain scale in terms of number of artists (approximately 50 or more artists).
● Keywords:
Cloud infrastructure, Task distribution processing, Asset management system, Progress management system,Cost Evaluation System, Automatic Report Generation, Patent Check System, System restoration in emergency and clarification of restructuring system etc.
● Organizer:
Tohru Yamamori (Polygon Pictures, Corporate Officer, Technology)
For inquiries and questions about attending, please contact contact@a-film-production-technique-seminar.com .