FPTSを振り返って
Looking back on FPTS
(株式会社ポリゴン・ピクチュアズ / スタジオフォンズ)
(Polygon Pictures Inc. / Studio Phones)
FPTSの各関連資料ページは、参加者の皆様に同意を経て、モデレータの視点で意見をとりまとめて掲載しているものとなります。
セミナーシリーズの状況に関わらず、ご参加頂いた方々が事後的に参照し続けられるよう恒久的な維持を念頭にまとめる旨をお伝えし、長年に渡ってのご意見・アイデアを含め、多大なる尽力をいただき現在にいたります。
この場をお借りしまして、改めて感謝を申し上げたいと思います。
本当にありがとうございました。
「クラフツマンシップとアーティストのテクニック特別編 20221001」でのディスカッションの後、他の関連資料と同様に、加筆しながらの公開としたものとなります。
FPTSの設立からクローズまでの流れは、下記の沿革ページの方をご覧頂ければと思います。
2016-2018
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/fppat_history.html
2018-2023
https://a-film-production-technique-seminar.com/crafts/crafts_history.html
■概要
■Overview
「クラフツマンシップとアーティストのテクニック特別編
20221001」では、ディスカッション「FPTSを振り返って」を開催しました。このページでは、FPTSの一連のセミナの経緯を振り返りつつ、それらで直面した課題、上手く進んで参加者のみなさまから称賛いただいた点、現行体制では扱えなかった課題、一連の会合でモデレータが挑戦した事柄など、過去を振り返りながら、FPTS以外でのセミナー運営や参加者の皆様の事後資料の充実を目指し、少しづつですがまとめていきたいと思います。
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■FPTS会合の参加者からのご意見
■Opinions from FPTS meeting participants
FPTS会合の運営においては、参加人数の肥大化・別会合にて大勢の方々へ向けての情報発信を行いつつ、可能な限り少数で密なディスカッションを展開出来るように努めてきました。ご参加いただいた皆様からは、このような会合があって良かった、是非続けて欲しいというお声も数多くいただきながらも、密なディスカッションを行う上での参加者抑制の際、参加出来ない方からの批判も多くいただく形になったかと思います。そこで、参加者の意見をまとめた形での関連資料の充実という方向性で会合運営を進めさせていただいたり、非常に限られたトピックを選定して、そのトピックに関心をお持ちいただいたかたを中心とした会合運営を進めたりと右往曲折しつつも改善へと努めてきました。そのおかげか、会場にお越し頂いている参加者の皆様からのお声は、年々熱のこもった感謝をいただけ、関連資料ページはかなりのアクセス数を維持したまま、公開当初からセミナーのクローズ後の2022年の時点まで続けられることとなり、比較的良い運営が出来たのではないかと考えております。
しかし一方で、アーティストからR&Dまでと多様な参加者層を歓迎する運営をしていたせいか、R&D的にはもっとアルゴリズムの詳細まで追って話したい、アーティスト的にはもっとアート面での話題に専念して話したいという声もあり、そういったお声に対応すべく、関連会合の形で、FPTS以外の会合企画や連動・連携など、セミナー運営そのものが多様性を育むものとなっていく傾向をとなっていきました。
それでも、セミナーのディレクションとして、また一つの在り方として歓迎頂くお声をいただけたように思いますし、セミナー運営に尽力頂く皆様の様子に、運営していて良かったと思える程度に内容のある会合企画を出来たのかなと、そのように考えております。
しかしながら、FPTSのような形態のセミナーが、ある種の限界を帯びている部分も拭えませんでした。モデレートに多大な神経を使うこれらの運営は、モデレータ側の熱意の方向がはっきりしている必要もあり、逆に言えば、参加者のご意見でもあった、題材をもう少し広く設定して欲しい、というお声には、対応しきれなかったと感じております。
そのため、FPTSで特集した話題には一定の偏りが残り、広がりという意味では限界を感じてしまうことになったと考えております。
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■ITインフラ、制作システム、パイプラインに関して
■Regarding IT infrastructure, production systems and pipelines
ITインフラ、制作システム、パイプラインといったトピックスを選んだ理由は、モデレータの一社が力を入れているという側面もありましたが、それ以上に、各社共通の話題というのを考えて行きやすいという側面がありました。多くのスタッフが関わり、大規模な制作へと向かうほどこれらの課題は顕在化していくことになるとも言え、そのために、一定規模以上のスタジオ中心での企画になりがちでもあり、批判を受けてしまった部分にもなりました。
一方、R&Dスタッフにしてみれば、他業界に遅れを最も感じているのが近年のIT技術革新に代表されるサーバーサイドでの各種サービスの設計や構築であり、焦りを背景に、セミナー内でこれらの関心を展開していく上では、ITインフラ、制作システム、パイプラインといったトピックスがちょうど良かったのではないかと考えております。
しかしその反面で、スタジオの体制や規模、目指すところが異なれば、互いのノウハウの価値を直接感じることもなかなか難しく、どうしても現在の業務での目線での感触をもとに、多少の距離を感じてしまうことにもなる、そのような部分があることにも気付きました。セミナー運営側としては、そのような状況でも、互いのノウハウを直接取り入れるのではなく、考えるきっかけとして、気付きを大切に議論いただける、そのような聴衆を自然と設定してしまう、そのような循環も生まれてしまったようにも思い、それらは反省点として改善しきれなかったように考えております。
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■制作ワークフローとパイプライン
■Production workflow and pipeline
映像作品を扱う上で、各社が得意とする作品の傾向が大きく異なるほど、制作ワークフローの違いやそれを支えるパイプラインの違いに、スタジオの多様性を感じられることとなりました。そこでは、視点が異なれば用いる技術や工夫も異なっていくように、自身では考えないであろうアイデアも展開され、それは時に互いの刺激にもなり、一方で何も感じないアイデアにも見え、その中で、少しでも積極的に意見を交わそうとする、その流れの良さは運営上での刺激にはなっていたように思います。
絵作りのテクニックを中心に扱ってセミナー企画を行ったことはありませんが、FPTSで制作ワークフローとパイプラインを数多く扱った理由が、ちょうど現代のIT上の課題を扱うことに合っていたという部分でした。ご参加いただいた方々には、それらの考えを汲み取っていただけ、一連の会合を工夫しつつ開催させていただけたと感じております。
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■FPTS-kitchenとPPI-kitchen
■FPTS-kitchen and PPI-kitchen
トイモデル的に社内に配備したパイプラインで手軽に新しいアイデアで制作フローを考えてみる、サーバーサイドサービスなど慣れない技術を使う際の手探り目的での試作を進めてみる、一連の会合ではより深いディスカッションのためにこのような機能の必要性を多々感じる部分がありました。
加えて、社内のパイプラインの課題紹介などをセミナ内で展開する際、現在動いているプロジェクトに関する課題に関わるシステム上の課題を紹介出来ないというジレンマが、参加しているスタジオでの共通の課題として浮かび上がりました。
そこで、モデレータ二社が中心となり、マイクロパイプラインツールキットとして、OSS化を目指す実装としての簡易パイプラインツールキットの開発に踏み切ることとしました。完成度が足らず、OSSとして公開する段階には至らなかったものの、希望者や大学などの研究者を中心に開発途上版を配布したり、社内スタッフへ展開し実際に使い込んでいくことで、サーバーサイドサービスへの推進上の課題に関して、十分な知見を得てセミナで紹介するなどの活用を行いました。
加えて、モデレータの一社であるポリゴン・ピクチュアズは自社のパイプラインの課題として、柔軟性の向上と変革の容易さを感じていた経緯もあり、スタッフの自己学習・自己研鑽をサポートしつつ、これらの運用上の課題や、社内トレーニングに必要な事柄の整理を進め、紹介などを行いました。
特には、サーバーサイドサービスとしての映像制作パイプラインの展開は、FPTSを通しての課題であったため、様々な環境下で利用可能なシステムとしてFPTS-kitchenを紹介し、ポリゴン・ピクチュアズ社内での利用可能性の模索の意味で、PPI-kitchenを紹介したりと、トライアル色の強い稼働からの知見紹介などをモデレータとして行ったりもしました。
FPTS-kitchne、PPI-kitchenは、実践利用に届かない簡易パイプライン構築キットではありますが、スタッフが社内で今後の改善を模索するたたき台となり、実践的感触を持っての改革案検討に有効で、設定が容易で改変しやすい学習性があることは一連の取り組みからわかりました。
実際、始めてPPI-kitchenを触ることになる若手スタッフに、PPI-kitchenへのDCCを用いた機能拡張を行っていただきましたが、始めて一時間程度で機能配備とGUIの自動構成を終え、学習・試作用途には十分な機動性を備えたものと考えております。
しかしながら、メンテナンス・サポートなどを踏まえると、OSS化するにはドキュメントも不足し、関わる人材もあまりに不足しているため、現状では一部の方々に触っていただく形で配布している状況となります。
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■FPTS関連会合での展開
■Development at FPTS-related meetings
制作ワークフローや品質管理、効果的なDXなどは映像分野に限らない多くの分野での課題となりますが、FPTS会合を通して、建築を始めとする様々な分野との会合企画も推進出来たこととなりました。これらの関連会合での経験は、業務上直接役に立つものでなくとも、周囲の状況を深く理解した上での設計検討や課題策定に役立つ傾向があり、スタッフのモチベーション向上などにも寄与する形で、良い展開になったのではないかと考えております。
これらはちょうど、昨今の副業推進と理由を同じくして、他分野から見た新鮮な視線でのアイデア発掘や、経験の獲得、社会的状況を理解していく糸口としての知見・経験の獲得など、そのような有効性を感じる良い機会になったのではないかと考えております。
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■まとめ
■Summary
数年に渡り、運営体制を毎回調整しながらの開催となりましたが、SNS・オンライン会議の普及で、当初に比べて少数で集まってじっくり話し合うセミナーの有効性を感じる展開となったように考えております。言い換えれば、各スタジオの情報発信や課題共有・公共的に意義を持ちそうな題材の掘り下げを重視し開催していた当初に比べ、少し未来に課題になりそうな題材をモデレータで話し合い設定し、そこに対して話し合う、そのような側面へと移行していったように考えております。
このように、セミナー形態を変化させ続けての運営でしたが、参加各社様のご尽力に助けられながら、FPTSの形態でなし得ていけそうな企画やアプローチは、やり切った感も出て来たことがセミナークローズの最大の要因かと考えております。
今後も、一定の情報共有やディスカッションの重要性をもとに、何か出来ればとは考えております。しかしながら、2022年末の節目をもって、このFPTSはセミナ企画を停止し、公開した資料の保持に専念したいと思います。
皆様のご支援に、心から感謝申し上げます。
ありがとうございました。
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