最近のアニメの制作工程と制作パイプライン構築時の難度について
Recent production process of anime and difficulty of constructing production pipeline
(株式会社グラフィニカ / 株式会社ポリゴン・ピクチュアズ / スタジオフォンズ)
(Graphinica,Inc. / Polygon Pictures Inc. / Studio Phones)
この資料は「映像制作パイプラインとアーティストのテクニック 7」への参加者を想定し、本資料は会合後にディスカッションされた内容をふまえ、課題を整理し会合を振り返るかたちで記載しています。
■概要
■Overview
本資料では、「手描きアニメを活かすセルルックパイプラインの可能性と課題とは」の資料への補足として、アニメ制作やセルルックの各工程の詳細な説明を行いつつ、会合中の詳細なコメントの紹介や会合後に調べた多少の内容を加えるたちで、パイプライン構築の視点からアニメ制作工程における課題やパイプライン構築の難しさを多少詳しくまとめていきたいと思います。
手描きアニメを活かすセルルックパイプラインの可能性と課題とは
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_possibility_celook_pipeline_challenges/index.html
の資料を補足するかたちでも記載させていただいておりますので、合わせてお読みいただけますと幸いです。
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■アニメの制作工程(手描き)の各工程
■
まず旧来からの手描きでのアニメ制作におけるワークフローと各工程について解説していきたいと思います。
手描きアニメにおける制作工程では、典型的には以下のようなワークフローとなっており、一部デジタル化が進んでいる工程もあります。旧来から培われてきた手法・技法を継承しつつ変化を遂げて来てはいますが、現在でも大まかには下記のワークフローで制作されているのが一般的だと言われております。
<脚本・設定・デザイン>
脚本と呼ばれる工程では、誰がいつどこで何をするのかといった話の概観を行う意味でまとめていくことを主目的としています。その作品のストーリー全体のベースとなり得るものを形作っていく上での重要な工程であると言えると思います。
シリーズ制作などでは全体の話数に対して各話数ごとにどんなストーリーを割り当てていくかといったシリーズ構成と呼ばれるものを考えることが通例で、制作する対象の規模に応じて、工夫を反映した形で呼称を工夫しつつも全体の構成をあらかじめ決めた上で制作を進めることが一般的です。
そこに対して、設定やデザインと呼ばれる工程においてその詳細を詰めて行くことになります。作品全体のデザイン設計を行う上での各種資料の作成やその概観を与えるとりまとめとなる資料を作成していくことにより、集団制作としての円滑なコミュニケーションや進行を進めていけることになります。具体的には、登場するキャラクター、小道具や乗り物、場面や背景などについて、設定やデザイン画を作成していくことにより、制作する対象の詳細を詰めあげ、実際に制作に参加するスタッフの全てが情報共有を行えるに必要な情報をまとめあげていくのがこの工程で目指すものとなります。
<絵コンテ>
脚本をもとに、キャラクターやプロップと背景との位置関係、カメラのアングル、動きの導線、撮影処理の指示など、作品のおおまかな演出を決めていく工程となります。絵コンテは映像の完成イメージを各工程のスタッフに伝えるための重要な設計図とも言えます。
絵コンテ段階で、実際のプロダクションにおいてどの程度アクションシーンが登場するか、3DCGを利用する場面をどの程度使えるかといった、作品の予算やスケジュールに影響がある点を考慮することによって、コスト面でもある程度事前にコントロールしながら、3DCGを効果的に利用していくうえでの大切な設計となります。
<レイアウト>
絵コンテをもとに、各カットの構図やキャラクターの配置や背景、カメラワークなど、さらに具体的な画面構成を描いていく工程となります。レイアウト工程後は、実際のアニメーション作業となる原画と美術などの原図工程へとフローが分岐していきます。
<原画>
絵コンテやレイアウトをもとに、アニメーションの動きの要となる、動き始め、キーとなる中間のポイント、動き終わりを描いていきます。スケジュールが非常に厳しいシリーズ制作などでは、この原画の工程を第一原画(一原)、と第二原画(二原)に分けることがあり、前者は元々の原画マンがラフに原画を描き、他の原画マンが原画としてクリーンアップすることがあり、
<動画>
原画と原画の間を連続する連した動きに作画する工程で、原画をスキャン用にトレスしクリンナップしたうえで、タイムシートの指示に従い原画間の中割りを描いていく工程となります。
<(背景)原図>
背景美術の工程に対して、ドローイングのための指示が記載された背景美術の設計図を作成していく工程となります。通常レイアウトの情報を兼用することが多いですが、必要であればレイアウトのデータに対し加筆修正や情報の整理を行い。光源処理の描き込みなど、最終的に合成を行う撮影時の処理に関わる部分は事前に摺り合わせを行っておく必要がなります。
3Dレイアウトの場合には、原図を作成するフォーマットやルールがアーティストごとにバラツキが発生しないように、あらかじめ演出や背景美術との調整も必要となります。
モデルデータの情報量、PSDファイルの構成、描画範囲、Bookやクミの指示方法、解像度、マスクの作成、手描き原図とのルール合わせなど認識合わせも必要となってきます。
また、3Dカメラワークのある場合は、背景美術で描かなければならない領域も増えていくため、合成時にカメラマップを利用することで、背景原図のサイズや枚数も増えやすくなります。
3Dレイアウトの場合、手描きのレイアウトと比べて原図の情報に不確定な部分が少なくなるため、背景美術工程へ構成内容を伝えやすくなりますが、一方で背景美術に伝達される情報量の多さから、背景アーティストがその情報に囚われやすくなってしまい、背景画の密度としては上がりますが、ある種塗り絵作業のような単純作業になってしまうことも多く、アーティスの感性が発揮しづらくならないよう注意が必要となってきます。
<背景美術>
背景美術は、背景原図で指示されたレイアウトやBook、クミの情報をもとに、実際の背景を描いていく工程となります。現在はドローイングの方法として旧来からの紙と筆を用いて水彩画の様式で描いていき、完成した画をスキャンするといったアナログ的な手法と、Photoshopなどの2Dデジタルソフトウェアを利用して、直接デジタルツール上で背景を描いていく手法が混在しています。
背景美術ではレイアウト時にカメラワークが含まれる場合、カメラが移動した範囲の背景が必要となるため、大版と呼ばれる通常よりも大きいサイズの美術画を用意する必要がありあります。また背景美術を撮影時にセル画と合成する際に、背景とキャラクターがずれてしまったり、背景領域が不足してしまうことを避けるために、原図工程での綿密な画面設計が大切となります。
またプリプロ時に美術ボードと呼ばれるストーリーのなかでキーとなるシチュエーションに対して、色彩的な表現も含めたイメージの共有のための美術ボード(背景サンプル)を作成する場合があります。美術ボードは撮影など他の工程での処理時にも参照されます。
<色彩設計>
キャラクターやプロップ、乗り物など、それぞれの各セルの色を必要となるシーンごとに設計して、作品全体にわたって利用される色見本表を作成していく工程となります。監督や演出の意図を汲み取りながら、作品の世界観やイメージ、配色やライティングを構成していく重要な工程となります。
<色指定>
色彩設計が作った色見本表をもとにして、カットごとで使用する色をカラーパレットとして作成してく工程となります。
シリーズ制作などでは、効率化を目的に前述の色彩設計と色指定という工程を同一のアーティストが担当することもよく見られます。
<仕上げ>
色指定で決められたカラーパレットをもとに、キャラクターやプロップ、乗り物など、各カットのコマごとにセルに対して実際に着彩していく工程となります。
比較的早い段階からデジタル化が進んだ工程でもあり、2値化された輪郭線の中を塗りつぶしを行うツールなどで色塗りを行っていきます。
<撮影>
セルの画や背景美術、CGでレンダリングされた画像、各工程から上がってきた素材を最終的に合成していく工程となります。
演出的な指示によって、2Dによるカメラワークや2Dエフェクトを追加することもあります。作品の映像を最終的に調節できる工程でもあります。現在の撮影作業はほとんどデジタルで行われていますが、デジタル化に伴い、各カットで必要な要素が、3DCG、モニターグラフィクス、エフェクトなど多様化し、アセット管理なども複雑化が進んできています。またそれらの影響もあり、カット制作に求められるアーティストのスキルも広範囲にわたる事が多くなってきています。「撮影」という名称はフィルム時代には実際にカメラを使用して素材を撮影していたアナログ時代の名残りとして「撮影」という呼び方が続いています。
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■アニメの制作工程(手描きと3DCGのハイブリッド)の各工程
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近年では、手描きアニメにおいて背景や乗り物に3DCGを利用したり、またはその逆として、セルルックCG内でエフェクトやアクションシーンに手描きの作画を用いるといったかたちで、手描きとCGのそれぞれが得意とする表現を上手く組み合わせるハイブリッドなワークフローで制作される作品も多くあります。
手描きと3DCGの両方を用いたハイブリッドな制作では、旧来の手描きのフローに3DCGの工程を追加するかたちでワークフローが設計されることが一般的で、双方が制作した画像を最終的に「撮影」と呼ばれる工程で合成していきます。
この章では、各工程の個別説明を中心に解説しますが、工程の流れ及び、前章の「アニメの制作工程(手描き)の各工程」との違いを説明していくことを目的に書き進めて行きたいと思います。
<モデリング>
3DCGソフトウェアを利用して、キャラクターやプロップ、乗り物やロボットなど、3Dモデルを作成する工程となり、3DCGのプロダクション工程では最も一番始めにスタートする工程となります。
通常のCG映像制作とは多少異なる点として、セルルックCGではモデル形状のエッジ部分に輪郭線を描画して絵作りを進めていくことがほとんです。輪郭線の描画の手法や作品のスタイルによっても違いが出てきますが、輪郭線がどこに描画されるか、輪郭線込みの造形として成立しているかなど、セルルック特有の絵作りを意識したモデリング作業が必要になってきます。
<リギング>
3DCGで作成されたモデルに、アニメーターがアニメーションをつけるための機能(リグ)を追加していく工程となります。スタジオによってはセットアップと呼ばれることもあります。一般的にはモデルデータとスケルトンと呼ばれる骨構造をバインドし、スキニングと呼ばれる手法で各骨構造からの影響をウェイトというパラメーターで調整していきます。IK/FKといったアニメーターが直感的にコントロールできるような仕組みや、モデル形状を変形させるデフォーメーションといった機能も付加していきます。
セルルックCGでのアニメ表現では、ケレン味のあるアニメーションのために、各スタジオで工夫を凝らしている工程でもあり、アニメーターが表現したい動きやモデルの形状変化のために、リグを何度もブラッシュアップしていくことも日常的に発生します。
<質感>
CGモデルに対して質感をつけていく工程となります。実際にモデルに質感をつけていくには、シェーダーと呼ばれるマテリアルをモデルと紐づけていきます。シェーダーでは3D空間のライトの情報などから、その画素の色をきめていくための計算を行うものとなりますが、セルルックCGにおいては、各セルの色を決めたり輪郭線の描画もこのシェーダー内で実装していくことも多いです。
<3Dレイアウト>
3DCGでのカット制作の場合、レイアウトを手描きではなく3DCGを利用してレイアウト作業を行っていきます。通常のレイアウト作業と同様に、事前にレイアウトに必要な情報を演出や美術、撮影とすり合せておく必要があります。
またレイアウトで使用する3DCGモデルを作成する前に、各モデルに対して
・使用頻度
・作成空間の範囲
・カット内でのカメラワークの有無
・加筆前提のラフ使用(パース参考)
・レイアウトのみ使用かどうか
・3DBGとして最終的に使用するかどうか
など使用目的を明確にしておくことが大切です。レイアウトでのみの仕様や最終的に3DCG背景として利用しないものは、モデルを詳細に作り込む必要がなくなるため、必要最低限のコストに抑えると言った計画を立てることで、効率よく準備をしていくことができます。
最終的な画面構成を見える形でレイアウトが行えるため演出での判断がしやすいく、またデジタルツール上で完結できるため、撮影とデータやり取りが行いやすい、レイアウトからアニメーション、背景原図など次工程への移行がスムーズに行えるといった3Dレイアウトならではの利点も多く存在します。
しかしながら、3Dレイアウトではいくつか注意すべき点もあります。例えば
一般的な作画レイアウトに比べ3Dレイアウトは様々な構図を試行錯誤することができる反面、なんどもリテイクを繰り返すことによって、工数がかさんでしまう可能性もあります。また、構造に破綻の無い画面構成ができシーン内の整合性も保てますが、3Dソフト内のカメラの特性上、画角に対して常に正しい見え方となるため、手描きアニメ特有のケレン味のある湾曲したパースなどを適用することが難しくなるといった側面もあります。
<アニメーション>
CGのキャラクターと作画のキャラクラーとの合成や、CGでのガイド作成の必要があるカットの場合は、事前に双方で内容を刷り合わせ、作画用にガイド素材の受け渡しかたやデータの構成を丁寧に決めておく必要があります。
手描きとCGとのハイブリッド制作の場合、CG側と作画側でどちらの作業スケジュールが先行するのかによっても、フローが変わってくため事前に確認しておく必要があります。
またアニメーション工程では、アニメーション付けをプライマリーとセカンダリーに分けることによって、段階的にアニメーションの要素を付加していくようなワークフローが採用されることもあります。
手描きアニメーションでの「原画」「動画」と近しい考え方となります。
- プライマリアニメーション
すでにレイアウトが作成されている場合はレイアウト(カメラアングル、キャラクターの立ち居地等)が決められている所から絵コンテのキャラクターの演技内容をもとに手付けでアニメーションをつけていきます。
(場合によってはモーションキャプチャーのデータをベースに作業していく事もあります。)
セカンダリアニメーションが分かれている場合は、基本的にはボディモーションまでを作成させることが多く、コマを抜くタイミングまでを含めるのが一般的です。エフェクトについてもタイミングや質量感が分かる程度の仮エフェクトをこの工程で作成することもあります。
- セカンダリアニメーション
ボディモーションが完了している状態から髪の毛や服、その他のボディのアニメーションに合わせて揺れるオブジェクトと、フェイシャル(表情)、その他シュミレーション等のアニメーションをつけていく工程になります。
※セルルックCGの場合はひとりのアニメーターが絵コンテを元にレイアウトを決め、アニメーション、エフェクト、仮コンポジットまでを一貫して任せられるケースが一般的です。(特にスケジュールがタイトなシリーズ制作の場合)
<ライティング>
セルルックCGにおけるライティングでは、ライトの方向を設定することにより、各セル色の領域をコントロールしていきます。
レンダリングされる各セルの色については、色指定でそのカットにおける色情報が、カラーパレット等で指定されるため、セルルックCGでのライティングという工程は、一般的なCG映像制作とは多少異なり、いわゆる塗りの領域を決めていく作業となります。
また輪郭線の太さ、表示、色といったコントロールについても、このライティングの工程で担当していくことが一般的となっています。セルルック特有の輪郭線についてもこの工程で調整していくことになりますが、アニメ的な表現を実現するために手作業による細かな調整も必要となり、また、作画とのハイブリッドの場合は、手書き部分との整合性をとるために非常に手間がかかる作業となります。
<レンダリング>
3DCGのデータから、キャラクターやその他の要素をコンポジットで使用するための連番画像を生成していく工程となります。
レンダリングはキャラクターやその他要素のコンポジットの構成仕様によって、連番素材を用意する枚数が変わってきますが、その数が多ければ多いほどレンダリングのコストは増加していきます。
またレンダーサーバーの性能(マシンスペックや台数等)は、レンダリング作業での品質やスケジュールに大きな影響があるため、適切なインフラを設計、導入する必要があります。
※セルルックCGの場合では、CGのアニメーターがレンダリングを含めたコンポジット作業を担当する場合が多くのスタジオで見受けられます。
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■アニメの制作におけるパイプライン構築の難しさ(制作ワークフロー面)
■
アニメ制作のワークフローでは、各社が連携した制作体制が日常化し、ある種の標準化が進んで来た背景もあり、フローそのものは各社を通じて大きな違いは出ていないのが現状と思われます。
これらは、一見すると制作を行っていく上での(標準化というほどでは無いものの)標準的と考えられるワークフローが存在し、パイプラインも構築しやすい環境のように思われますが、各社間での連携性を確保するためのシステム構築なしには、細かく生じるスタジオ間での制作上のフローの違いにより、データ管理上の運用コストが肥大化する傾向にあると言え、その意味では成熟しているとはまだ言い切れない段階のシステムではないかと会合内でもコメントが出ていました。
実際のところ、アニメ制作を行う請負型のスタジオの多くは、ワークフロー上の工程ごとに部分的に案件を受注するとった体制で制作することが多いといった、業界の請負い体制を考えることは欠かせないのが実情ですが、スタジオ間をアセットが頻度高く行き来するワークフローなども存在することも多く、ひとつの作品の制作に数社が関わることが日常化していることを見据えていくと、スタジオ間での各社のパイプラインで達成した機能の柔軟な行き来などを想定していくことも今後の課題として考えられるでしょうし、アニメ制作という主眼に即した課題として今後考えていくべきことの最たるもののようにも会合内の感触からは思われました。
しかしながら実際にこれらの機能を達成しようとした場合は、各スタジオ間での作業上の細かいルールをワークフローの設定と同時に伝達することも必要となると思われますし、現在は各社でまちまちとなっているデータ管理に関するアプローチや手法などの存在を考慮すると、スタジオ間でのワークフローやデータ管理の方法などの側面での標準化を進めていくことは大きな課題となり得るのではないかと思われました。
これは一社での取り組みや数社レベルでの取り組みで改善していける部分は少ないというのが現状かと思われますが、それでも考えていかなければならない、そのような側面を持つ課題ではないかと思われました。
さらに、アニメ制作におけるパイプライン構築の難度を上げていることの要因としては、デジタル化の進んで来た過渡期としての現代ならではの事情として、デジタル化の進んだ工程とアナログのままで進んでいる工程が混在したまま成立しているという側面があります。これは作業を進めてみると個々の作業の速度の違いを生むこと要因となり得るもので、パイプラインの設計の難度を読み辛くしていくこととなるかと会合後も話題となりました。
例えば、「演出」「原画」「動画」という工程などは、まだまだ物理的な紙の上で手描きでの作業も行われています。それらのデジタル化されていないデータなどの運搬は「カット袋」と呼ばれる大型の封筒にカットごとにまとめて管理及び伝達されており、カット袋の表紙に用意された工程ごとのチェック欄や進捗情報なども記載する項目などを通して伝達が行われていくこととなります。それらカット袋のアナログ情報を管理していくことは非常に手間がかかり管理も煩雑となるため、パイプラインの構築においての大きなネックとなって来ているかと思われます。
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■アニメの制作におけるパイプライン構築の難しさ(システム面)
■
各社ごとに構築されたインフラの規模や設計には違いが出てくることから、工程ごとにスタジオ間でデータが頻繁に行き来するアニメ制作のワークフローでは、作品の制作に関わるすべてのスタジオ内のインフラ環境で動作可能な、共通したシステムやツールの設計および開発は非常に難易度が高くなるため、スタジオ間で共有可能な標準化されたシステムを構築することの難しさが、そのまま各スタジオでのパイプラインの構築の難しさへと繋がっているように思われます。
また、複数のスタジオ間で連携して作業を進めている状況から、スケジュールの変更や遅延、工程上の手戻りでのロスも発生しやすい制作体制においては、ワークフロー上のルールが明確に定められたパイプラインシステムがかえって効率性を低下させ、制作上の足かせとなってしまう場面も予想されます。そのため制作現場からは、いざという時にはパイプラインから離脱した状態でも制作を継続していけるようなパイプラインの設計を求める傾向が強いといったことも会合後に話題となりました。
しかしながら制作上の様々なイレギュラー的な事象にも柔軟に対応できることを重視しすぎてしまった結果、データ管理上の曖昧さやトラッキング不可能な作業フローが発生してしまうことで、パイプラインを構築する本来の目的から逸れていってしまう懸念が存在しますし、アニメ制作のワークフローの特性にフィットしたバランスの取れたパイプラインを構築していくことの難しさがそこにあるように思われました。
また制作体制面においても年々複雑化が激化しているといった状況があります。例えばこれまで国内でのスタジオ間の連携が中心だったものが、近年ではアジア諸国を中心に海外スタジオとの連携も加速してきている背景もあり、パイプラインシステムを構築してくうえでは、インフラ面も含めて、海外のスタジオとの連携も考慮した設計を組み込んでいく必要性が高まっていることも会合を通じて確認されました。
しかしながら、外部スタジオを含めた制作体制ではこれまで社内のみでの制作体制と比較して、必然的により高度な制作管理体制を求められていくことになります。また海外のスタジオとの連携では、各国でのインフラ環境の違いにより、想定よりもネットワーク回線の速度が出ずデータの転送に多くの時間を費やしてしまったり、停電など予期せぬトラブルについても考慮が必要になってくると思われいます。
スケジュールや品質の管理、アセットのチェック体制、アウトソーシング先のセキュリティチェック、言語や物理的な距離があるスタッフ同士の円滑なコミュニケーションなど、パイプラインに求められる機能も必然的に多くなり、パイプライン構築のハードルが上がるような制作体制へと向かっているようにも思われました。
アウトソーシングを行う上での考慮すべき点や課題については下記の資料をご参照いただけますと幸いです。
アウトソーシングの増加とその対応
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_outsourcing_response/index.html
またスタジオ間の連携ではスタジオ間でのデータ同期についても考慮が必要となってきます。
手描きアニメの分野では、3DCG制作と比較して、扱うデータ量がそこまで大きくはなく、データの種類も少ないため、ほとんどの場合手作業によるサーバーへのアップロードやダウンロードを行う形態がよく見られますが、パイプラインの機能のなかに外部スタジオとの連携機能を持たせることによって、より制作の効率性を高められる余地があるのではないかと考えられます。
また制作体制面においても年々複雑化が激化しているといった状況があります。例えばこれまで国内でのスタジオ間の連携が中心だったものが、近年ではアジア諸国を中心に海外スタジオとの連携も加速してきている背景もあり、パイプラインシステムを構築してくうえでは、インフラ面も含めて、海外のスタジオとの連携も考慮した設計を組み込んでいく必要性が高まっていることも会合を通じて確認されました。
しかしながら、外部スタジオを含めた制作体制ではこれまで社内のみでの制作体制と比較して、必然的により高度な制作管理体制を求められていくことになります。また海外のスタジオとの連携では、各国でのインフラ環境の違いにより、想定よりもネットワーク回線の速度が出ずデータの転送に多くの時間を費やしてしまったり、停電など予期せぬトラブルについても考慮が必要になってくると思われいます。
スケジュールや品質の管理、アセットのチェック体制、アウトソーシング先のセキュリティチェック、言語や物理的な距離があるスタッフ同士の円滑なコミュニケーションなど、パイプラインに求められる機能も必然的に多くなり、パイプライン構築のハードルが上がるような制作体制へと向かっているようにも思われました。
アウトソーシングを行う上での考慮すべき点や課題については下記の資料をご参照いただけますと幸いです。
アウトソーシングの増加とその対応
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_outsourcing_response/index.html
またスタジオ間の連携ではスタジオ間でのデータ同期についても考慮が必要となってきます。
手描きアニメの分野では、3DCG制作と比較して、扱うデータ量がそこまで大きくはなく、データの種類も少ないため、ほとんどの場合手作業によるサーバーへのアップロードやダウンロードを行う形態がよく見られますが、パイプラインの機能のなかに外部スタジオとの連携機能を持たせることによって、より制作の効率性を高められる余地があるのではないかと考えられます。
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■インフラ運用の難易度とそこでのエンジニアリング
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昨今クラウドインフラや、ネットワーク技術そのものの進歩により、データ転送のための速度向上や、Webシステムによるリアルタイムな情報共有などが行えるようになり、これまで自社スタジオ内でのみ作業が可能だった事柄も、インフラ面においては別ロケーションや外部スタジオでも比較的スムーズに作業が行えるITインフラが整備されつつあるように思われます。アニメ制作においても、スタジオ間の連携でのデータや情報の共有のために、これらのインフラを活用していくことも検討していけるものと思われます。
しかしながら、多様な制作体制を支援するためのIT技術が進歩する一方で、インフラの設計や運用はより複雑なものとなってきており、さらにはクラウドインフラを中心に仮想化技術、Webアプリケーション技術、インターネットを介した際のセキュリティの担保など、インフラ運用に纏わる難易度も年々高度なものへの要求が激化してきていることが会合の講演などからも明らからとなりました。
特に進歩が激しいIT技術を有効に自社スタジオ内に取り入れていくためには、そこで働くエンジニアスタッフのスキルアップやモチベーションの向上、育成のためのトレーニングなど、一定のコストをかけてでも実施していく必要性が高まっていくと予想されます。
また、近年のIT業界全体での人材不足もあり、手描きアニメの分野でもCG映像制作分野でも、最新のIT技術を扱うことが可能なエンジニア人材の確保もその難しさが増しているように感じられます。
まずはありもののソリューションをうまく活用することから始めつつ、パイプラインの高度化と足並みをあわせるかたちで、徐々に自社のワークフローに最適なインフラへと設計を見直していく、エンジニアもその過程のなかでスキルを磨いて向上させていく、そのような段階を踏みながらインフラそのものを変革していくことが、スタジオとしての性能向上や個性の発展につながっていくと会合を通して強く感じました。
パイプラインインフラの変革やエンジニアのスキルやモチベーションについては、過去の資料にまとめておりますので、下記資料もご参照いただけますと幸いです。
映像制作で求められるインフラエンジニアのスキル
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_infraengineer_skill/index.html
映像制作パイプラインの実践と課題
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_production_pipeline_issue/index.html
AWSを例にしたクラウドパイプラインの基礎
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_basic_cloudpipeline/index.html
人材獲得の難しさと研究開発の難しさ
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_human_resource/index.html
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■パイプラインの開発体制と求められるリテラシー
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パイプラインの開発においては、ツール開発などを行っていくTA/TDと、インフラやシステムの設計・運用を行うエンジニアが中心となって進めていくことが一般的に多いかと思いますが、設計や機能を実装していくうえで、アーティストサイドやマネジメントサイドからも要望や意見を出し合いながら開発は進んで行くものと思われます。しかしながら近年のインフラの高度化やセキュリティ面での厳格化などを踏まえて開発を行っていく必要があり、そこに関わるすべてスタッフには、エンジニアであるかどうかに関わらず一定水準以上のITリテラシーが必然的に求められていきます。
また手描きアニメの制作に関わるスタッフは、その多くがフリーランス契約であることは最近の報道からもよく知られているかと思いますが、多様な雇用形態はスタッフが働き方に自由度を持つことを可能にしている一方で、スタジオ運営においては管理面、教育面においてより厳しさが求められていくのではないかと考えています。
スタッフは複数のスタジオで同時に勤務することも想定されるため、各スタジオにおける情報の機密性が守られているか、商品のイメージを損なう発言がSNS等で行われていないか、セキュリティ上問題のない環境で作業がおこなわれているかなど、チェックすべき項目も必然的に増えていくように思われます。
またプロジェクトごとに流動性の高いアーティストに対しても、情報リテラシーやセキュリティ面でのトレーニングが必要になるケースも発生してくるでしょうし、特に海外の大型案件等ではクライアントからの厳しい制約下のもと、厳格に対応していくことが必須となってきます。またインフラの設計やセキュリティ対策といった、スタジオの根幹に関わるような業務においては、社員に代表されるような社内スタッフでなければその機密性、安全性を維持していけない難しさもあります。
スタジオとして抑えておくべきポイントを踏まえたうえで、多様な雇用形態を推進していくといった運営上のバランスが今後より一層重要になってくるであろうと考えられます。
抑えておくべきポイントとして、以下の資料もご覧いただけますとより具体的なイメージが掴みやすいかと思いますので、ぜひご一読いただければと思います。
コンテンツのイメージと情報発信の難しさ
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_offer_information/index.html
インフラの管理上のチェック範囲の広がり
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_infra_check_scope/index.html
自動レポート生成の構成上のポイント
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_automatic_report/index.html
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■実際の制作前の対話システム面の課題など
Dialogue system aspect in pre-production etc.
手描きアニメでの絵コンテの取り扱いは、CG映像制作でよく用いられてきたアニマティクスと同じように扱われてきましたが、映像制作での進捗管理システムとの連携やそれらを遠隔地など異なるロケーションで共有し、確認するための仕組みなどが会合中に課題として挙げられていました。
CGを主体とした映像制作などでは、Webアプリケーションをベースとしたシステムを構築することで、これらの課題を解決してきた経緯があります。つまり手描きアニメの分野においても、Webシステムなどを利用してアニメ制作のワークフローに合わせた同様な機能を持つ仕組みはとても有効であると考えられいます。
クラウドインフラやオンプレミス環境でのWebサービスを介して、コミュニケーションを円滑に行うためのシステムを構築し、CG映像分野がこれまで培ってきた工夫を取り入れていくような展開が望まれ、同時にそれらを構築する難しさゆえに、課題としても浮き彫りになってきたと考えられます。
実際にWebシステムを構築していく際には、既存のワークフローを見直しつつ、自動化を上手く取り入れることなどが重要で、円滑な対話システムが生産性に大きな効果をもらたしていくと考えています。
サーバーサイドシステム構築にあたっては以下の資料もご参考いただけますと幸いです。
アートワークの自由度を支えるためのサーバーサイドサービスのデザイン
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_support_variance_artwork/index.html
コンセプトワークのパイプラインの設計の難しさ
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_concept_work_pipeline/index.html
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■ITインフラ技術の活用とサーバーサイドでの処理
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4K/8Kといった映像の高解像度化、高精細化が進むなか今後もアセットデータの肥大化が予想される一方で、アセットデータそのものやその制作手法を見直していくことも重量ではないかとは考えています。
例えば、肥大化するデータの要因のひとつとして、ワークフローやパイプラインシステムのなかでキャッシュ化されたデータを多く利用することが挙げられます。アニメ制作の現状においてはそこまで肥大化したデータは存在しないかもしれませんが、よりCGなどのデジタルツールの利用が拡大していくなかでは、今後は考慮が必要になってくる可能性も高まっていくでしょう。
キャッシュ化を抑えたワークフローの構築として、プロシージャル処理を活用した動的なアセットの生成を主体としたワークフローに転換していくことにより、ファイル化されるデータサイズを飛躍的に低減させていくことも可能となります。
しかし、プロシージャル処理を主体としたワークフローを実現するには、パイプラインシステムやそのインフラを根幹から見直していく必要も同時に発生するため、非常に難度が高いシステム設計が求められます。また計算負荷の高いプロシージャル処理をサーバー側で処理していくといった話題も過去の会合でディスカッションがありました。
以下は過去の会合でのプロシージャル関連の資料となりますので、ご参照いただければと思います。
プロシージャル化できそうな領域の検討
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_to_be_procedural/index.html
Houdiniでのプロシージャルビルディングとパイプライン上での課題
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_houdini_procedural_building/index.html
サーバサイドでのプロシージャルモデリング
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_serverside_modeling/index.html
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■パイプラインの構築とワークフローの変革を目指して
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今回の会合では、講演準備段階で非常に緻密に練り上げられた各社のワークフロー面での課題の紹介が行われましたが、ワークフロー上でのアイデアの展開を行う上での工夫を含め、自社の文化を育てるようなアプローチでの工夫が多く、標準的な枠組みでは中々おさまらないであろう現状も感じられました。つまりは、あるスタジオにとって良いと思われる技術上の発展がなかなか多くのスタジオに良い展開となることも少なく、各社共通の変革というのは難しいのではないかとも思える側面がありました。
しかしながら、既存のワークフローを見直しつつ、自社の強みを活かすかたちで、ワークフローそのものを変革していくことを既に多くのスタジオが進めており、その流れこそがより良い発展に繋がるようにも強く思われましたし、その上での各社の課題共有の場の重要性を多くのスタジオが主張されていたことから、今回のような機会が様々な形態で実現していくことで、各社でのパイプラインの構築やワークフローの変革がより推進されていくのではないかと思われました。
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パイプラインインフラの変革やエンジニアのスキルやモチベーションについては、過去の資料にまとめておりますので、下記資料もご参照いただけますと幸いです。
映像制作で求められるインフラエンジニアのスキル
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_infraengineer_skill/index.html
映像制作パイプラインの実践と課題
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_production_pipeline_issue/index.html
AWSを例にしたクラウドパイプラインの基礎
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_basic_cloudpipeline/index.html
人材獲得の難しさと研究開発の難しさ
https://a-film-production-technique-seminar.com/fppat/materials/ppi_phones_human_resource/index.html